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第5章 それは、おとぎ話だ

「おはよう。あれ、沢渡さんは？」

「松名くんの姿が見えたから、前の道で降ろしてもらったの。そんなことはいいから、なにをしているのか、答えなさいよ」

　彼女たちの秘密を知った俺。その前では、蒼空を装うことなく本来の自分として接している。そして、今の怜未の口調は一層、厳しいものだ。

　たぶん彼女は怒っている。そう感じながらも――

「もしかしたら怜未が来るかもと思ったから。あ、怜未って呼んで大丈夫？　もちろん人前では呼ばないけど」

　俺はわざと軽口を利いていた。

「勝手にすれば。ふざけているの？」

「割と真面目なつもりだ。なんでそんなに、怒っているんだ？」

「別に、怒ってなんか……」

　大声を出したことが気恥ずかしかったのだろう。怜未は、ふうと息を吐いてから、声のトーンを下げる。

「このコンビニで、松名くんと蒼空が待ち合わせていることは聞いてる。でも、私は怜未なの。待っていても、こんな処には来ないんだよ」

「でも、来ている」

「それは、たまたま見かけたからで……」

「ほっておくこともできた筈。でも、怜未は来てくれた」

　すると、怜未は厳しい目で、俺を睨んだ。