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秘密の恋人
第20章 約束
「及川さんて彼氏居たんだ」
「……え?」
隣の席の西村さんが、手に持ったボールペンで私の左手を指した。
「そういう指輪は自分ではあんまり買わないでしょう?しかも薬指だし。」
「あ、これ…」
確かめるように薬指に嵌った指輪に触れる。まぁ、ね、と笑ってやり過ごした。
この春、義隆さんに作ってもらった指輪。
義隆さんの息子さんの隆行さんは、神戸の宝飾品関係の会社に勤めていて、企画の仕事をしているらしい。
そこで、企画が通った、と報告を受けたのが去年の秋。
話があるから週末ウチに帰ってくる、と聞いて、寒くなってきた時期だったから、鍋の準備をした。
2人だと食べ切れないから具材が余ってしまって、流用に困るけど、流石、若い男の子がいると減る量が全然違って、久々に鍋を楽しめた。
締めのお雑炊まで堪能した後、隆行さんが鞄からタブレットを出した。
「ちょっとコレ、見てくれない?」
私たちは隆行さんを挟むようにして、タブレットを覗きこんだ。
隆行さんがアイコンをタップして動画を立ち上げる。
再生マークをタップすると、優しいオルゴール調のメロディに合わせて、フワッと 筆記体のロゴが浮かび上がって、スーッと消えていく。
百貨店とかで見たことはあるんだけど、持ってはいないし、何て読むのかも知らないブランドだった。そうか、隆行さんの勤め先ってこの会社だったんだ…と初めて知った。
画面はオレンジがかったピンクのバックに、白いバラの花びらが散りばめられたものに変わる。
ハラハラと花びらが消え、つぎに浮かび上がったのは、
《 婚約【エンゲージ】でも、結婚【マリッジ】でもない、ふたりだけの新しいカタチ…Pre marriage ring 》
というキャッチコピー。
そして、ハーフエタニティのダイヤのリングを嵌めた、女性の手と、それに重なる、お揃いのデザインの、石なしのリングを嵌めた男性の手の写真。
動画はそこで止まった。
「来春発売される新商品なんだ!」
隆行さんは興奮気味だった。
「……え?」
隣の席の西村さんが、手に持ったボールペンで私の左手を指した。
「そういう指輪は自分ではあんまり買わないでしょう?しかも薬指だし。」
「あ、これ…」
確かめるように薬指に嵌った指輪に触れる。まぁ、ね、と笑ってやり過ごした。
この春、義隆さんに作ってもらった指輪。
義隆さんの息子さんの隆行さんは、神戸の宝飾品関係の会社に勤めていて、企画の仕事をしているらしい。
そこで、企画が通った、と報告を受けたのが去年の秋。
話があるから週末ウチに帰ってくる、と聞いて、寒くなってきた時期だったから、鍋の準備をした。
2人だと食べ切れないから具材が余ってしまって、流用に困るけど、流石、若い男の子がいると減る量が全然違って、久々に鍋を楽しめた。
締めのお雑炊まで堪能した後、隆行さんが鞄からタブレットを出した。
「ちょっとコレ、見てくれない?」
私たちは隆行さんを挟むようにして、タブレットを覗きこんだ。
隆行さんがアイコンをタップして動画を立ち上げる。
再生マークをタップすると、優しいオルゴール調のメロディに合わせて、フワッと 筆記体のロゴが浮かび上がって、スーッと消えていく。
百貨店とかで見たことはあるんだけど、持ってはいないし、何て読むのかも知らないブランドだった。そうか、隆行さんの勤め先ってこの会社だったんだ…と初めて知った。
画面はオレンジがかったピンクのバックに、白いバラの花びらが散りばめられたものに変わる。
ハラハラと花びらが消え、つぎに浮かび上がったのは、
《 婚約【エンゲージ】でも、結婚【マリッジ】でもない、ふたりだけの新しいカタチ…Pre marriage ring 》
というキャッチコピー。
そして、ハーフエタニティのダイヤのリングを嵌めた、女性の手と、それに重なる、お揃いのデザインの、石なしのリングを嵌めた男性の手の写真。
動画はそこで止まった。
「来春発売される新商品なんだ!」
隆行さんは興奮気味だった。