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秘密の恋人
第3章 始マリノ裏側
女性の二十代半ばの貴重な時間を、先のない関係に縛り付けるのは忍びない。
それこそ時が経つにつれ、責任を問われる話になりかねない。

責任を取ると言ったところで、彼女の親に挨拶に行くのか?
自分とさほど歳の変わらないだろう彼女の父親に、娘さんを下さいと頭を下げるなど、とんだ茶番だ。

そしてその茶番はそれだけでは終わらない。私は息子に、父さんはこの人と再婚しますと告げねばならない。彼女と3つしか違わない息子に。

いずれ、息子が結婚相手を連れてきたら?彼女と同年代とか、下手したら歳上の可能性もある。

20年という歳の開きは、そう簡単に埋まる溝ではない。

結婚という形を取らなかったとしても、私達に未来はない。

私は、この先老いて衰えてゆく。
彼女が、若い男に惹かれて私の前から去っていく事も充分考えられる。
そうなった時、私は笑顔で彼女を見送る事が出来るのだろうか。

若い雄の台頭に怯える老いたボス猿のように、牙を剥いて威嚇してしまうのではなかろうか。
嫉妬に狂って彼女の腕を掴んでしまうのではなかろうか。
そんな醜悪なシナリオには耐えられない。
だからせめて。
幕引きは自分で。

そう思うのに、私は彼女を突き放せない。

泥沼だ…

足を踏み入れてはいけなかった。

手にしてはいけなかったのだ。

たとえ、彼女に望まれたとしても…




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