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秘密の恋人
第6章 偶然ノ出逢
そこで駅に着き、私はJRの東西線を利用しているから、阪神と同じく地下に入る。

「あ、JR?じゃ、ココまでだね。」

と、巽さんは傘を私にくれた。

「あの、じゃ、傘代…」

と、お財布を出そうとした私に

「イイってそんなの。だいたいあの場に居たのが及川さんじゃなかったら傘は俺の前で売り切れてた訳だし、こうやってココまで一緒に帰れただけでラッキーだから。及川さんと喋れたし、連絡先も聞けたし、十分収穫あったから。」

と、傘を私に押し付けるように渡し、巽さんは阪神の改札に向かって歩いて行く。
その後ろ姿、チャコールグレイのスーツの右肩から背中にかけて、雨でびっしょりと濡れて色が変わっている。
傘に殆ど入れてなかったんだろう。
コンビニのビニール傘は、折り畳みや100円ショップで売ってるモノに比べれば大判だったけど、それでも大人2人をカバーできる大きさじゃあない。私もあまりひっついちゃいけないかな、と思ってはいたから、バッグはかなり濡れたけど、身体は殆ど濡れてない。
巽さんが気を遣って、私に傘を差し向けてくれてたってことだ。
…風邪とか、ひかないといいな…
巽さんの優しさに、心がほっこりし、同時に、胸がキュウッと痛くなった。
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