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秘密の恋人
第10章 焦燥
新しい男ーーー

幾度も重ねた菜摘への嘘が、現実のものになりつつある、と感じた。

口にした言葉は言霊を持ち、いずれは現実となる。

そんな迷信を信じているわけではないが、その時はふと、そう思った…

そして私はやはり、焦燥感を覚える。

笑って菜摘を見送ることなど出来ない。

相手の男の腕を掴んで引き離してやりたい。

だが、そんなことが出来るはずもない。

そんなことをしたところで、娘を心配する父親と間違われるのが関の山だ。

『お父さんですか?』
とあの青年に聞かれ、菜摘と2人気まずい思いをしているところに、畳み掛けるように
『菜摘さんとお付き合いをさせて頂いております。』
と挨拶される…それは…一際醜悪なシナリオだった…

その場はそのまま通り過ぎ、いつもの逢瀬の時間…

新しい男が出来た素振りも見せず、変わらず私に身を預ける菜摘。

小憎らしいほどいつもと変わらず。

なんだ、イイ奴が出来たんじゃないのか?という言葉が喉元までせり上がって、どうしても吐き出せない。

結局、その、苛立ちとも焦燥感とも取れぬモヤモヤした気持は、まま身体に現れ、1度終えたのに全く治らない。

しっかりとカタチを保ったまま、ヒクヒクと訴えかける欲に負け、私は再び菜摘を求めた。

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