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秘密の恋人
第11章 虚勢
「…貴方がそれを本当に望んでるのなら、どうしてそんなに哀しそうな顔をしてるの…?」
痛いところを突かれる。
そして此の期に及んでも、私の口はまだ嘘しか紡がない。
「…娘を嫁に出す父親の心境、とでも言うかな…」
菜摘が目を大きく見開く。
切れ長の、涼しげな目元が、歪み、潤み、やがて、一筋の涙が頰を伝う。
「…私のこと、ずっとそんな風に思ってたの…? 娘を抱くなんて、酷い父親ね。私は、貴方を恋人だと思ってた。貴方も、そう思ってくれてるって信じてた。でも、違ったの…そんなに親離れして欲しければ、離れてあげる…さようなら…」
菜摘は目を伏せ、更に涙が頰を伝う。
その涙を拭きもせず、菜摘は結局口をつけることのなかったコーヒーを鏡台に置き、バッグを持って部屋を出て行った。宿泊分の清算は済ましてあるから部屋のドアも内側からなら問題なく開く。
私はしばらく座っていたが、菜摘が部屋を出た以上、いつまでもぐずぐずしてしたら清掃員が来てしまう。
諦めて立ち上がり、帰路に着いた。
本当に娘と思っている女性を抱けるとしたら、そりゃ本物の変態だろ。最後の嘘くらい見抜いて欲しかった…
それともそれも、単なる我儘でしかないのか…
痛いところを突かれる。
そして此の期に及んでも、私の口はまだ嘘しか紡がない。
「…娘を嫁に出す父親の心境、とでも言うかな…」
菜摘が目を大きく見開く。
切れ長の、涼しげな目元が、歪み、潤み、やがて、一筋の涙が頰を伝う。
「…私のこと、ずっとそんな風に思ってたの…? 娘を抱くなんて、酷い父親ね。私は、貴方を恋人だと思ってた。貴方も、そう思ってくれてるって信じてた。でも、違ったの…そんなに親離れして欲しければ、離れてあげる…さようなら…」
菜摘は目を伏せ、更に涙が頰を伝う。
その涙を拭きもせず、菜摘は結局口をつけることのなかったコーヒーを鏡台に置き、バッグを持って部屋を出て行った。宿泊分の清算は済ましてあるから部屋のドアも内側からなら問題なく開く。
私はしばらく座っていたが、菜摘が部屋を出た以上、いつまでもぐずぐずしてしたら清掃員が来てしまう。
諦めて立ち上がり、帰路に着いた。
本当に娘と思っている女性を抱けるとしたら、そりゃ本物の変態だろ。最後の嘘くらい見抜いて欲しかった…
それともそれも、単なる我儘でしかないのか…