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きょうどうせいかつ。
第7章 そしてふたたび よるになる。
姫と魔王は、ずっとずっと、勇者が訪れる事を待っていた。
二人にはどうしてもやらなければならない目的があり、そのためには、人間と魔族が共存する事が不可欠だった。
姫は神に誓った。
どのような事をしても、勇者に嫌われようとも、自分の身体を利用しても、その目的は果たすと。
そして、姫は知っていたのだ。
自分と魔王、二人だけの力では、人間たちを説得するのは難しいと。
所詮、女の身の上。世迷い言だと笑われ、医者に連れて行かれるのが落ち。
自分の願いが夢物語だなんて、絶対に思わせたりしない。
神なんて本当は信じていない。
不可能だという事も、よく理解している。
そもそも、あの民衆たちが、自分の話に耳を傾けてくれるかも分からない。
その程度の、無謀な夢なのだ。
分かっている。不可能だってことくらい。
ちゃんと分かっているのだ、それくらい。
だけど、それでも、一回くらい希望を持ってもいいと思った。
こんな我がままな願いを叶えるための、希望を人に託してもいいと思った。
その希望が勇者だった。
彼ならば、たくさんの旅を経験した彼ならば、きっと協力してくれると思った。
それが、魔王と恋に落ちた愚かな姫の、最後の夢だった。