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きょうどうせいかつ。
第9章 いつまでたっても はじまらない。
「それにしても驚いた……。この城はちゃんと人がいたのか」
「それ、どういうことやねん。イザベラちゃんが人ちゃうって意味か?」
ブレットを説得したときには、もう既に夜になっていた。
いろいろあって疲れたのか、イザベラは夕食を食べず、部屋で寝ていた。
何故か、彼女の代理人として突如現れた、キャメロンという世話係が彼女の分の食事を食べていた。
何でも──
イザベラ様が、ダミアン様がお作りになられた食事を、一口も残すなというご命令をなさったので、代わりに、私が、仕方なく、ここに上がってきた。
ということらしい。
「…………」
その彼女は一口も話すことなく、ぺろりと食事を平らげて、じっとブレットとクリスを観察していた。
「何だか見られているんだが……」
「ああ、キャメロンさんは男が大っ嫌いやねん。やから、死ねって思っとるんちゃう?」
あははっと笑いながら、何事もなかったようにブレットの横で食事を食べているクリス。
そんなクリスを見ながら、こいつ案外いい奴かもと思った。
「なんや、オレのことじっと見て……あ、残念ながら、オレにそういう趣味ないから。ごめんな?」
「そんなわけないだろう!」
──うわ、今キャメロンさんめっちゃ睨んでた。
見てる。すっごい見てる。
ブレットは、はあ、とため息を吐いた。
ブレットはこれからここに住むことになった。
同じ夢を心がけるもの、同じ屋根の下で暮らした方が結束力が高まるとかなんとか、そんなことをイザベラが言っていたのだ。
「──あと、私のことは名前で呼んで頂戴。姫なんて役に立たない称号で呼ばれても、嫌なだけだから」
「じゃあ、俺のことも勇者じゃなくブレットって呼べよ」
「分かったわ。おやすみ、ブレット」
なんだか今になって妙に恥ずかしくなってきた。
自分からブレットって呼べと言っておいて、照れるなんておかしい。
そんなことを考えていたからだろうか、ブレットの顔は真っ赤になっていた。
その一部始終をクリスとキャメロンがじっと見ていたのだが、ブレットは全く気にしていない。