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きょうどうせいかつ。
第9章 いつまでたっても はじまらない。
「なんやお前、イザベラちゃんに惚れたか?」
「な……!そんなわけないだろう!?」
「そうやって否定するところが、更に怪しいわー。おもろー」
クリスはニヤニヤ笑って、パンを一口頬張った。
好きになるわけないだろう。
好きになれるわけないだろう、あんなものを見てしまったら。
ブレットはイザベラのことを何故か嫌いにはなれなかった。
性格が豹変したにも関わらず、相変わらず恋心を抱いていた。
しかし、本人はそのことに全く気づいていないし、気づいていたとしても、きっとその気持ちを否定していただろう。
ブレットはよく理解していたのだ。
イザベラという女は、魔王であるダミアンしか目に映っていないのだと。
恋は盲目とはよく言うが、この場合は少し異常だった。
イザベラがダミアンに対して抱いている感情は、好きという感情を超えてしまっているのだ。
崇拝していると言っていいほど、熱烈にダミアンのことを愛してしまっていた。
さすがのブレットもそこまでは理解していなかったが、理解していたとして、何もできなかった。
だからとっくに諦めていた。
そして、ブレットは、そのやるせなさをすべてダミアンに向けていたのだ。
ダミアンのことを、まだ完全に許していない。
最後の最後まで、ダミアンとだけは一緒に暮らしたくないと意地を張っていたほどだ。
ダミアンを恨んでいるのだ。
未だに。