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共犯者の微笑
第1章 読み切り短編
それから焼き鳥。
最初は砂肝。むっちむちのグレイの表面は、まだ焼き場から上がってきたばかりで、振られた塩とにじみ出た鳥の脂がシュワシュワしてる。小さな席に、鳥の香りが深くだたよう。
「砂肝ってさ」割烹着のヒトがテーブルを離れてから、こちらを見ずに彼が言う。
「ちょっとオトコのアレに似てない?」
アレ?、と顔で聞くと、彼は声を立てず、クチビルだけで答えた。
き・と・お。
もう。どうしようもない馬鹿だ。口惜しいからあたしだって、その答えを聞いたら、彼のこと見つめたまま、舌を伸ばして、熱い砂肝に舌先をチロチロ触れさせる。誘惑してやるんだから。馬鹿メ。
プリッとした身の上で塩と脂がキュンキュン粒だってる。彼の目線を十分に意識したまま、あむっ。最初の“きとお”をお口に。大ぶりにカットされた身が、お口の中でムチムチと動きながら、じゃくり、じゃくりと噛み下される。見事な食感。そして鼻に抜ける香り。あぁ、なんて美味しいんだろう。