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共犯者の微笑
第1章 読み切り短編
それから、「ネギ巻きでございます」といってサーブされる串。白ネギを鳥の薄切り肉で巻いてある。何かの薄いタレがかかっているのだろうか、とてもジューシーで香ばしい。鼻をヒクヒクさせながら(いけない、そんな下品な)、でも我慢できずにその串にしゃぶりついてしまう。分厚いネギと肉の巻物だから、おちょぼぐちでは入らない。
ええい、ままよ。
お口を大きく開けて、その串を味わう。香ばしく、とてもやわらかい肉とネギのハーモニー。塩タレが効いて、シンプルだけどすごく深い味わい。
彼を見ると、ニコニコしながら夢中で食べてる。まるで子どもみたい。
このオトコは、饒舌になるべきときと、寡黙になるべきときを良くわきまえている。
ぼんじりねぎま。
余計な脂の抜け落ちた、トロトロのぼんじりと、白ネギの交互に刺された串。
自分で案内した店。多くの男は、アレがうまいコレがうまいなどと余計な講釈を垂れたがる。しかし彼はそういうのは全然ない。おそらく、興味がないのだと思う。あるいはあたし自身が、この店へくるための「ダシ」なのかも、って思う。
脂っこいぼんじりを、お口の中でハフハフ言いながら、むしろダシでいたい、って、あたしはそう思う。食べる時は食べることに限りなく集中し。セックスの時はセックスにどっぷりつかり。
あたしはこの男のそういう、子どもじみた集中が大好きだ。