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さくらホテル2012号室
第3章 笑い皺に惹かれる理由(わけ)
少し前の時代、この国に本物の上流階級がいて、豊かな時間の過ごし方を知っていた人たちが集ったホテルだ。
人々はここでダンスを踊ったり、ゴルフを楽しんだりしていたのだろう。
高い天井とささやかでも豊かな図書室が、このホテルのユニークさを物語る。
わたしは東京では区営図書館に勤務していたから、このホテルの図書室の豊かさをいつでも感じていた。博物学と芸術、クラシックな小説作品。それがこの図書館の蔵書の傾向だ。流行に左右され
るような書籍は少なく、休暇を上手に使える人たちにこそ読まれるべき本が、書架に詰まっている。