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さくらホテル2012号室
第8章 夢想する指先


大抵はそこに登場するのは名もない男性達だ。時々映画俳優などがわたしを責めることもあるが、だいたいの場合、相手役には顔がない。


ところがいつしか先生がその相手になっていった。
先生が、音読教室でごく稀に出してしまう声色。そんな演技は生徒にはできないからと、普段なるべく抑えている先生の、俳優としての本気の声。深く胸に響き、わたしの芯を貫く声。
それがいつしかわたしの中に残るようになった。先生のセミナーが行われた翌日の朝は、いつしか先生にあの声で抱かれることを妄想する自分がいた。


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