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さくらホテル2012号室
第9章 はじめての2012号室
何も言わないまま、わたしから先生の手をとった。
先生の指の股に、自分の指を差し込んで。
そのまま、流れるように腕を絡めた。
そして肩を寄せ、そっと先生にもたれた。
自分が何をしているかなど、その時は少しも考えられなかった。
先生も言葉なく、わたしの肩を抱いた。わたしたちはそのままの姿勢でしばらく佇んでいた。河津桜のあの樹だけが、そんなわたしたちを知っていた。
音のない部屋。
弱い冬の日差し。
言葉を持たない私たち。