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さくらホテル2012号室
第14章 桜貝の散歩


「先生、くすぐったいです」
わたしは笑いながら、そういう。
先生も笑みを浮かべながら、答える。
「素足に波と砂を感じるのは何年ぶりですか?」
まるで子どもに帰ったようにはしゃぐわたし。


そう、何年ぶりだろう。
こんな風に笑うのは。こんな風にはしゃぐのは。
わたしは先生の手を取る。
照れ屋な先生は顔を俯かせ、こちらを見ない。
けれど、手を振り払うことなく、わたしに付き合ってくれる。


頬をなでる風はおだやかに前髪に遊び、足の指先に戯れる波と砂は温かく、やわらかい。





そう言って先生がつないだ手を離す。
そしてその手を波打ち際の砂に埋める。
何かを掴んで、寄せる波で砂を洗い流した。

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