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紅蓮の月~ゆめや~
第7章 第二話 【紅蓮の花】 二
 そんな凛子を両親はどうやら養い君の忠衡の正室にと考えていたようだ。また忠衡自身、凛子を憎からず思っていた。だが、当の凛子は物心ついた頃から忠衡を兄のように慕い、実際、異性というよりは兄のような存在として見ていた。
「あの日、別れ際にそなたが私を好きだと言った時、私はさして愕きはしなかった。何故なら、忠衡殿からそなたの私への気持ちを既に聞いていたからだ」
 国境でいよいよ義経と別れる時、凛子は思い切って自分の中で芽生えた義経への恋心を義経に伝えたのだ。確かに、あの時、義経は愕いた様子ではなかった。そのときは別段不思議に思いもしなかったのだけれど。
 まさか忠衡が義経に凛子の気持ちを教えていたとは、否、忠衡が凛子の恋心に気づいていたとは思いもしなかった。
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