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紅蓮の月~ゆめや~
第17章 -すべての終わりに- 
 茫然と立ち尽くす実幸の傍を十二月の風が吹き抜けた。冷たい真冬の風は実幸の心の中まで吹き込んだようで、実幸は身体を震わせた。
 ふと頬に冷たいものが触れ、実幸は空を振り仰いだ。灰色の天から白い花びらが落ち始めている。ひとたびは止んだ雪がまた降り出したらしい。
―日々の暮らしに倦んだら、また、おいでなされませ。ここは夢を売る店、「ゆめや」でございます。
 ふいに澄んだ声音が聞こえたような気がして、実幸は周囲を見回した。だが、ひろがるのは何もない、だだっ広い空き地ばかり。
 雪は徐々に激しさを増して、実幸の上に降り積もってゆく。冬に降る雪は、春に咲く桜の花片を思い出させる。実幸は濡れるのにも頓着せず、降る雪を眺め続けた。
      
              【ゆめや-紅蓮の月 完】                 
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