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紅蓮の月~ゆめや~
第8章 第二話 【紅蓮の花】 エピローグ
見回せば、そこは、花凛がつい今し方までいた元どおりの小さな店の中であった。周囲を古着が一面に埋め尽くしている。女主人の背後にある柱時計が相変わらず刻をきざんでいる。
花凛はそっと自分の身にまとった打ち掛けに触れた。この打ち掛けは彼女(凛子)が着ていたものだ。最愛の男性と最期の瞬間を迎えたときのもの。
記憶が一挙に巻き戻されてゆく。
花凛の眼から大粒の涙が溢れ、頬をつたった。
「夢を見ていました」
その儚い呟きに、女主人は頷いた。
「泣くほどに哀しい夢でしたか」
短い沈黙の後、凛子はゆるりと首を振った。
「いいえ、哀しい―けれど、幸せな夢でした」
花凛は緩慢な動作で打ち掛けを脱いだ。女主人は花凛から打ち掛けを受け取る。紅い打ち掛けは再び朱塗りの衣桁に掛けられた。
花凛はそっと自分の身にまとった打ち掛けに触れた。この打ち掛けは彼女(凛子)が着ていたものだ。最愛の男性と最期の瞬間を迎えたときのもの。
記憶が一挙に巻き戻されてゆく。
花凛の眼から大粒の涙が溢れ、頬をつたった。
「夢を見ていました」
その儚い呟きに、女主人は頷いた。
「泣くほどに哀しい夢でしたか」
短い沈黙の後、凛子はゆるりと首を振った。
「いいえ、哀しい―けれど、幸せな夢でした」
花凛は緩慢な動作で打ち掛けを脱いだ。女主人は花凛から打ち掛けを受け取る。紅い打ち掛けは再び朱塗りの衣桁に掛けられた。