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紅蓮の月~ゆめや~
第9章 第三話 【流星】 プロローグ
プロローグ
美都(みと)はバスの車窓越しに流れる風景をぼんやりと見つめていた。突如として行く先を告げる音声案内が響き、美都は傍らのボタンを押して、降りることを知らせた。バスには美都の他には運転席の真後ろに腰の曲がった老婆が一人乗っているだけ、乗客は殆どいない。
ほどなく停留所に停まり、美都は運賃を払ってバスを降りた。ふいに懐かしさが一挙に溢れ出す。実のところ、この小さな町を訪れるのはもう二十年ぶりになるというのに、何もかもがつい昨日見たばかりのように鮮明な記憶としてとどめられている。
美都がこの町に暮らしていたのは幼い頃のほんの一時期のことにすぎない。なのに、今ここにあるすべてのものが泣きたいほどに懐かしかった。美都は右手に小さなボストンバックを持ち、ゆっくりと見憶えのある町並みの中を歩き始める。
美都(みと)はバスの車窓越しに流れる風景をぼんやりと見つめていた。突如として行く先を告げる音声案内が響き、美都は傍らのボタンを押して、降りることを知らせた。バスには美都の他には運転席の真後ろに腰の曲がった老婆が一人乗っているだけ、乗客は殆どいない。
ほどなく停留所に停まり、美都は運賃を払ってバスを降りた。ふいに懐かしさが一挙に溢れ出す。実のところ、この小さな町を訪れるのはもう二十年ぶりになるというのに、何もかもがつい昨日見たばかりのように鮮明な記憶としてとどめられている。
美都がこの町に暮らしていたのは幼い頃のほんの一時期のことにすぎない。なのに、今ここにあるすべてのものが泣きたいほどに懐かしかった。美都は右手に小さなボストンバックを持ち、ゆっくりと見憶えのある町並みの中を歩き始める。