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紅蓮の月~ゆめや~
第11章 第三話 【流星】 二
美耶子の思惑なぞ知らぬげに女房は嬉しげに頷く。その表情に昨夜の満ち足りた夫婦の営みをかいま見たように気がして、美耶子は思わず頬を赤らめた。
「はい、ですので、まさかお殿様だけがお帰りになっていたとは思わなかったのでございます。今朝方、良人が文を届けてきた折、初めてそのことを知りました。昨夜、お殿様がお帰りになる時、我が良人もお供してご一緒に帰ると申し上げたそうにございますが、お殿様が康光はゆるりと致せ、自分は一人で先に帰るとお心遣い下されたとか申しております」
いかにも気配りの人、兼家らしい配慮だ。美耶子は兼家のそんなさりげない優しさを好ましく思っていた。昨夜を逃せば、康光が今度この屋敷に来られるのはいつになるか判らない。だからこそ、兼家は自分だけ一人先に帰り、康光だけを残した。
「はい、ですので、まさかお殿様だけがお帰りになっていたとは思わなかったのでございます。今朝方、良人が文を届けてきた折、初めてそのことを知りました。昨夜、お殿様がお帰りになる時、我が良人もお供してご一緒に帰ると申し上げたそうにございますが、お殿様が康光はゆるりと致せ、自分は一人で先に帰るとお心遣い下されたとか申しております」
いかにも気配りの人、兼家らしい配慮だ。美耶子は兼家のそんなさりげない優しさを好ましく思っていた。昨夜を逃せば、康光が今度この屋敷に来られるのはいつになるか判らない。だからこそ、兼家は自分だけ一人先に帰り、康光だけを残した。