この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
紅蓮の月~ゆめや~
第15章 最終話 【薄花桜】 二
「済まねえな」
身体を起こそうとする治助を脇から支てやると、治助は小さな声で言った。
「今日の卵は昨日、市(いち)で買ったばかりなの。たくさん食べてね」
小文が微笑むと、治助は力なく頷いた。
「お前には苦労ばかりかけて、申し訳ねえ」
心底済まさそうに言うのへ、小文はわざと明るく拗ねたような口調で言う。
「水臭いことを言わないで」
頬を膨らませて見せる小文を眩しげに見つめ、治助は弱々しい微笑を浮かべる。
「小文、お前、やっぱり親父さんの言うように家に帰った方が良いんじゃないのか」
その言葉に、小文は顔色を変えた。
「何で、何で、そんなことを言うの? 私たち夫婦じゃない。私は治助さんの女房なのよ? 私はずっとお前さんの傍にいる―」
身体を起こそうとする治助を脇から支てやると、治助は小さな声で言った。
「今日の卵は昨日、市(いち)で買ったばかりなの。たくさん食べてね」
小文が微笑むと、治助は力なく頷いた。
「お前には苦労ばかりかけて、申し訳ねえ」
心底済まさそうに言うのへ、小文はわざと明るく拗ねたような口調で言う。
「水臭いことを言わないで」
頬を膨らませて見せる小文を眩しげに見つめ、治助は弱々しい微笑を浮かべる。
「小文、お前、やっぱり親父さんの言うように家に帰った方が良いんじゃないのか」
その言葉に、小文は顔色を変えた。
「何で、何で、そんなことを言うの? 私たち夫婦じゃない。私は治助さんの女房なのよ? 私はずっとお前さんの傍にいる―」