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紅蓮の月~ゆめや~
第17章 -すべての終わりに- 
 久しぶりに訪れたこの小さな町は相変わらずひっそりと静まり返って、クリスマスが近いというのに、通行人さえいない。
 バスを降りた実幸は雪を踏みしめながら、ゆっくりと歩いた。バス停を降りて真っすぐに伸びた道を歩いてゆくと、ものの五分としない中(うち)にあの店があるはずだ。
 淡い期待を抱いていた実幸は、そこにあるはずの店がないのに、茫然とした。かつては商店街であったこの界隈には今も空き店が建ち並んでいる。だが、確かにあの店があった場所だけ、ぽっかりと穴が空いたように店が無くなっているのだ。両脇の空き店舗は更にうらぶれ、朽ちてはいたけれど、ちゃんと今も変わらず眼の前に存在しているのに、「ゆめや」だけが跡形もなくきれいに消えている―。本当に、あの店の存在を思わせるものは何もない、見事なまでになくなっていた。
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