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紅蓮の月~ゆめや~
第3章 紅蓮の月 二
二
それから数日後のこと、珍しく信長からお召しがあった。夜になって、帰蝶は色めき立った侍女たちに念入りに化粧を施され、白一色の寝間着姿で寝所に伺候した。当の帰蝶本人よりも正室に仕える侍女たちの方が初めての夜のお召しに張り切っている。奥方様に一日も早くお世継ぎをと願って止まないのは美濃の斉藤家から付き従ってきた侍女も織田家古参の侍女たちも皆同様である。
そんな回りの期待や思惑も帰蝶にとってはうっとうしいものでしかなかった。
寝所に入った時、まだ信長は来ていなかった。あの気性だ、人に待たされるのは我慢ならなくても、自分が待たせることには何の仮借も感じないのだろう。否、端から信長には人を待つという意識自体が欠落しているのかもしれない。彼にとって、待たせるという行為はあっても、待つという行為はないのだ。
それから数日後のこと、珍しく信長からお召しがあった。夜になって、帰蝶は色めき立った侍女たちに念入りに化粧を施され、白一色の寝間着姿で寝所に伺候した。当の帰蝶本人よりも正室に仕える侍女たちの方が初めての夜のお召しに張り切っている。奥方様に一日も早くお世継ぎをと願って止まないのは美濃の斉藤家から付き従ってきた侍女も織田家古参の侍女たちも皆同様である。
そんな回りの期待や思惑も帰蝶にとってはうっとうしいものでしかなかった。
寝所に入った時、まだ信長は来ていなかった。あの気性だ、人に待たされるのは我慢ならなくても、自分が待たせることには何の仮借も感じないのだろう。否、端から信長には人を待つという意識自体が欠落しているのかもしれない。彼にとって、待たせるという行為はあっても、待つという行為はないのだ。