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おんな小早川秀秋
第5章 石田三成という男
三成が顔を上げさせようと手を伸ばせば、あきはそれにも恐怖を覚え強張る。三成は手を慌てて引くと、やり場がないのを頭を掻いてごまかした。
するとそこへ、あきの悲鳴を聞きつけた頼勝が駆けつける。
「どうした、お嬢!」
頼勝の目に映るのは、泣きじゃくりながら土下座するあきと、招いてもいないのにいつの間にか屋敷の中にいる三成。頼勝は頭の血が上るまま、三成の胸ぐらを掴んだ。
「お前っ、お嬢に何をした!」
「よ、頼勝様、違います! 石田様は何もしてないんですっ!」
「だって、そんな怯えて泣いてるじゃないか!」
「それはっ……石田様が、私を女だと知らなかったのですから、仕方なかったんです!」
必死になって弁解すれば、頼勝は渋々三成から手を離す。
「一体、何があったんだ?」
「いえ……あの、実は――」
あきがこれまでの経緯を説明すれば、頼勝はようやく納得し頷く。そして三成に頭を下げると、潔く謝罪した。
「治部殿、失礼をつかまつった」
「いや、あれで俺を疑わぬ者はない。無礼があったのはこちらも同じ、頭を上げられよ」