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おんな小早川秀秋
第5章 石田三成という男
だが三成は、目の前に立ったまま動こうとしない。着替えるにも着替えられずに着物を握り締めていると、三成は眉間に皺を寄せた。
「なんだ、早く着替えろ。影武者のくせに、女装は嫌だと文句をつけるつもりか?」
その言葉に、あきはようやく気付く。三成はあきが影武者である事は見抜いているが、女である事は見抜いていないのだと。
「いえ、嫌な訳ではありません。ただ、私……」
「嫌ではないなら早くしろ。こっちは時間がないんだ」
あきが説明しようとしたその時、痺れを切らした三成があきの着物の合わせを掴む。その瞬間、頭によぎったのは安芸で襲われた夜。あきを蹂躙しようとした、無法者の手だった。
「――きゃあああぁっ!!」
走る恐怖に、あきは思わず三成を突き飛ばしてしまう。頭を抱えしゃがみ込み震える様子に、三成は目を丸くした。
「お前……まさか」
「っ! ご、ごめんなさい、私……なんて無礼を……」
蘇る恐怖の記憶と、三成に無礼を働いた焦り。混乱したあきは、涙で頬を濡らしながら頭を下げた。
「いや……いい、頭を上げろ。無礼を働いたのは、俺の方だ」