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おんな小早川秀秋
第2章 小早川隆景という男
「いえ、私達は等しく太閤を支える将です。太閤の築いた太平を守る事は、すなわち私の使命。私は、私の義務を果たしているだけに過ぎません」
「それは、なんと忠義の士にふさわしい心掛け。それを秀吉様に報告出来ないのが、もったいない限りでございます」
「忠義とは、人に話して歩くものではありません。報告など、元より不要ですよ」
口と目があべこべな二人は、しばらく沈黙して睨み合う。折れたのは、山口の方だった。
「その心遣い、傷み入ります。ではしばらくの間は、亀山をこちらが、名島は隆景殿にお任せします。とはいえ、秀俊様は元から伏見の方におりましたから、これからも伏見で過ごしていただこうと考えております」
伏見は、各地の武士が集められ暮らす場所である。秀俊はこの年で既に丹波亀山の主ではあったが、実質今まで運営していたのも家老達。ようするに、密かに秀俊が身代わりと変わろうとも、周りは何も変わらず世を回していけるのだ。
「しかし隆景殿、あまり無理はなされますな。隠居したいと申し出たのも、嘘ではないでしょう。隆景殿の忠義は、秀俊がしかと引き継ぎましょう」