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おんな小早川秀秋
第2章 小早川隆景という男
「ええ、秀俊が立派に跡継ぎだと言える日が来るまで、しっかり守りましょう。私の父、元就は七十を越えてもなお、民のため働き続けました。私も、長生きして励まなければ」
秀俊、の部分に僅かな力を込めて発言すれば、山口の眉間に皺が寄る。隆景はそれでも表面の微笑みは崩さず、穏やかに言い切った。
「山口殿。ここ中国は、かつて謀略や暗殺が盛んな地でした。山口殿のように素直で実直な方は、戸惑う事もあるでしょう。じっくりと、風土に慣れていただきたいと思います」
「……ええ、そうですな。この地は、なかなか難しそうだ」
山口の顔は完全に歪み、辺りは一触即発の空気に包まれる。話が飲み込めないあきでも、剣呑である事は分かる。冷や汗を流していると、頼勝が割って入った。
「では、今日はこの辺りでお開きにしましょう。そういえば隆景殿、拙者一つ隆景殿にお聞きしたい事がござるのですが」
「私に?」
「その、若さの秘訣です。こうして顔を合わせてみると、とても山口の爺様より年上には見えません。何か秘訣があるのなら、拙者もぜひ試してみたいと思いまして」