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第3章 秀俊修行

　
　頼勝はそう言うが、あきにはその気遣いがなんなのか分からない。目を丸くし首を傾げると、頼勝は文を指差した。

「まずは、ひらがなだな。武家の男に宛てる文なら、普通漢字を多用するもんだ。だが、これはひらがなが大分多い。こういう文は、女や子ども相手に向けた書き方だ」

　つまりそれは、秀俊ではなくあきに向けたものだという証明でもある。確かによく見てみれば、あきでも理解出来る部分がちらほらとあるようだった。

「それと、あまり達筆に書いてないのも特徴だな。知ってるか、本当に美しい崩し字ってのは、読む側もそれなりの教養がないと読めないんだ。受け取る相手の事を考えた、優しい文だと思うぞ」

　文字だけで伝わる隆景の温かさに、あきは自然と笑みを浮かべる。長いその文を抱きしめ、頬ずりしたい衝動に駆られた。

「ま、後は長さが普通なら満点だったんだけどな。こんな長い文をもらったら、返事書く時自分も長文で返した方がいいかと悩むだろ？」

「そんなところも……きっと隆景様らしい一面なんだと思います。私、読んでもないのにこの文が好きになりました」