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おんな小早川秀秋
第3章 秀俊修行
「だってよぉ、ほら……ああもう、分かった、俺がやればいいんだろ!」
ただ読むだけで目が疲れそうな文だが、擁護した手前断る訳にもいかない。頭をかきむしりながら覚悟を決めれば、残る二人は胸を撫で下ろした。
「頼勝殿、宴が始まるまで、少し時間があります。ちょうどいいので、教えてやってください」
「今からか?」
「酒が入った後では、まともに教えられなくなるでしょう?」
正成のもっともな言い分に、頼勝は口を尖らせる。山口は頼勝の子どものような反応に溜め息を漏らしながら、背中を叩いた。
「では、頼んだぞ」
秀俊の代理として動く山口は、いつでも忙しい。頼勝を残し正成を連れて、朝の仕事に向かった。
「ごめんなさい、頼勝様。私のわがままで、余計な手間を……」
「ああなに、お前が謝る事じゃない。どうせ文字は読めなきゃ困るし、教える事は嫌じゃないんだ。問題はただ一つ、この文が長すぎるって事で」
「武家ではもしかしてこれが普通なのかと思ったんですけど、やっぱり長いんですね」
「ま、それだけ隆景殿がお前さんを大事にしている証拠だろ。それにこの文、きちんと気遣いしてるんだぞ?」