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おんな小早川秀秋
第3章 秀俊修行
文に記されているのは、たわいもない世間話や隆景の生い立ちであった。隆景の故郷である安芸の美しい風景や食べ物、それらと共に家族と過ごした思い出。まるで本を読んでいるかのような書き方に、あきはもちろん、頼勝も内容に惹かれていた。
文は、主に幼少期の話やその当時の安芸について書かれた時点で締めくくられる。読み終えた頼勝は、感心し唸りを上げた。
「これは……もしかすると、小早川隆景って人間を後世に残すための、いい資料になるかもしれないな。面白い」
「隆景様って、本当に賢い方なんですね。こんなに長い文なのに、全く時間を感じませんでした」
「早く返事を出して、続きを読もうぜ! きっと次は、隆景殿の青春時代が語られるはずだぞ」
すっかり目的のすりかわった頼勝に、あきは苦笑いをこぼす。しかし無邪気にはしゃぐ頼勝の気持ちも、同じく文の続きを読みたいあきにはよく分かっていた。
「そのためにも、私に文字を教えてください。なんだか、すごくやる気が出てきました!」
「おう、じゃあさっそく、筆と紙を用意して――」
だが、盛り上がったのもつかの間。山口が部屋に戻り、二人を呼び出す。