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おんな小早川秀秋
第3章 秀俊修行

ようやく稽古が終わると、あきは縁側に腰掛けぐったりとうなだれる。正成は隣に座ると、手拭いを差し出した。
ふとそこで、正成の目に飛び込んできたのはあきのうなじだった。汗ばみ、ほっそりとしたそれは、男では有り得ない色香を匂わせている。
「……筋肉が足りない」
あきのこんな姿を見れば、たちまち正体が露見してしまう。危惧した正成は、ひとまず手拭いをあきの首に掛けて隠した。
「すいません、正成様」
「いえ、それより私達三人を様付けで呼ぶのは、もうやめた方がいい。誰がどこで聞きつけるか分かりません、主君が家老を様付けで呼んでは、不自然極まりない」
「しかし……」
「あなたは、もういかなる時でも、秀俊です。女である事も、元の身分も関係ありません。敬うべきは、金吾中納言より格上の者のみ。秀俊様は本来、隆景殿にもひけを取らない存在なのです」
「確か、本当の秀俊様は太閤様の養子……でしたよね」
「小早川家の養子になったとはいえ、秀俊様が豊臣の未来を担う重要な役目である事に変わりはありません。むしろ、重要だからこそ、養子に飛ばされたのですから」

