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おんな小早川秀秋
第3章 秀俊修行

それから数日は、朝に剣術の稽古、昼には宴と作法の指導、夕には文字の勉強、夜には隆景との交流と、忙しい日が続いた。中でもあきが特に不得手なのは、全く馴染みのない剣術。この日の朝も、あきは正成に厳しく指導されていた。
「脇が甘い! 素振りは全ての基本、きちんと型を覚えなさい!」
ひたすら木刀を振り、怒声を浴びせられるこの時間。額に流れる汗は、拭ってもすぐに溢れ出す。もう何回素振りしたかも分からず、手が上がらなくなってきても、正成は一切容赦なかった。
「しっかり頂点から剣を振る!」
「は、はい!!」
正成は三人の家老の中でも落ち着いた性格だが、剣を手にすると目の色が変わる。そこにあきは、正成の縁者であり猛将と言われている、稲葉一鉄の影を見たような気がした。
戦で槍を振るうのは、通常下の兵である。大将となる人間は馬廻りが付き、彼らが戦を受け持つのだ。故にさして剣術は必要ないと初めに話していた冷静沈着な男は、もうどこかへ消えてしまっていた。
連日の稽古で、足も腕もすっかり重くなったあきは動きが鈍くなる。すると正成の怒号がますます飛ぶのだから、悪循環であった。

