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おんな小早川秀秋
第3章 秀俊修行

文に関しては、一番の古参である山口に訊ねるのが確実だ。如水を始め、誰とどんな仲で、どれだけ親しかったのか。秀俊が、どのような考えをする人間だったのか。手かがりを掴むには、もう人伝に聞くか文を読むかしかない。
「文といえば……あきさん、この前の文のお返事は、そろそろいただけるでしょうか」
「え?」
突然話が変わり、あきは言葉を詰まらせてしまう。隆景は苦笑いすると、鼻の頭を掻いた。
「年を取ってから、どうも父の悪い癖が移ってしまったようで、つい文を書くと長くなってしまいまして。迷惑かと思いますが、もちろんあれに合わせた長さの返事をする必要はありませんからね」
「あ……いえ、むしろ長いだなんて思わないくらい、興味深い文でした。私、文字が不得手で、少し時間が掛かっているんです。でも、決して迷惑ではありませんから!」
「文字が不得手……」
すると隆景は、あきの手を取り手のひらを眺める。伝わる隆景の温もりに胸がざわめいたその時、隆景はぽつりと呟いた。
「まめが出来ていますね」
刀の稽古、所作や文字の勉強、覚える事が山ほどあるあきの手は、いつの間にか荒れている。

