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おんな小早川秀秋
第3章 秀俊修行

「私の我が儘で、無理をさせてしまいましたね。文は一度お休みしましょうか」
「え……」
「覚える事が大変な中、負担になるでしょう。文は私に向けたものですから、休んでも」
だがあきはすぐ首を横に振り、隆景に訴える。
「い、嫌です! 私、負担なんか感じていません。どうせ文字はきちんと覚えなければいけないんですし、隆景様の文があるからやる気が出るんです」
「しかし……」
「刀を振るうのは、正直苦手です。でも、文字と向き合うのは、嫌いじゃないです。秀俊として生きる事になって、色々生活は変わりましたが……こうやって教育を受けられるのは、嬉しいんです」
あきの目は真っ直ぐ隆景を見つめ、若者の持つ希望に溢れている。隆景はあきの手を労るように撫で、温かな声を掛けた。
「あなたは私達の都合で巻き込まれただけなのに、前向きで一生懸命ですね。嫌だと泣いても、誰も責められは出来ないでしょうに」
隆景の言葉一つ一つに、あきは胸が高鳴る。繋がれた手の温もり以上に熱くなる体に、あきは戸惑いを覚えた。
(この感情、なんだろう。これが、父に抱く敬愛なのかな)

