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おんな小早川秀秋
第5章 石田三成という男
 
「何か、御用でしょうか。お伺いします」

 動揺を隠し、立ち上がって礼を返せば、男の顔はますます渋くなる。つかつかとあきの目の前までやってくると、顎を取られ検分された。

「影武者か。金吾はどこだ?」

「えっ!?」

 たった一言交わしただけで、見抜かれた驚き。あきが目を丸くすれば、男は険しい顔で溜め息を漏らす。

「金吾は俺を目の前にして、そのように堂々と受け答えはしない。本物ならば、怯えて声を震わせ、決して目を合わせようとはしないはずだ」

「それは……小早川家の養子となり、隆景様とお会いして、気持ちが強くなったのです。以前と変わったとすれば、そのせいでしょう」

「……それと、目元だ」

「え?」

「本物は、右目の下に黒子がある。まさかそれも、養子になったから取れたとでも言うつもりか?」

 身体的な特徴を指摘されては、返す言葉が見つからない。あきが観念し謝罪すれば、男は手を離した。

「申し訳ありません……」

「それで、金吾はどうした? 役目を放り出して、町にでも繰り出したか」

「それは……その、いつお戻りになるかは分からないので、本日はお帰りください。お役目についてのお話でしたら、頼勝様が伺います」
 
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