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おんな小早川秀秋
第5章 石田三成という男
「その程度の事で放浪されては困る。今すぐ探し出し、こちらへ呼び戻せ」
「その程度ってなんだよ! あんな若さで邪魔者扱いされて、乗っ取りの片棒担がされてんだぞ」
「全ては豊家のためだ、それを寂しいだの悔しいだの、感情で憎まれる筋合いはない」
頼勝の憤りを一言で切り捨てると、男はあきに目を向ける。
「すぐに戻れぬなら仕方ない、今日は役目通り、お前が影武者として来い。秀吉様は、今日秀俊と会いたいと仰せだ」
「は、はい、すぐに向かいます」
あきが頷けば、頼勝も続こうと首を回す。だが男は何の感情もない声で、また頼勝を切り捨てた。
「頼勝殿はお呼びでない。影武者が戻るまで待たれよ」
「へ? いや、俺も行くよ、こいつ影武者だぞ、ぼろを出さないよう、しっかりついててやらんと」
「問題があれば、俺がとりなす。さして重要な用事ではない、仰々しく家臣を引き連れては、かえって怪しまれるだけだ」
男はあきの手を掴むと、強引に連れ出す。有無を言わせない態度は、頼勝が苦い顔をするのも納得である。あきも、この男に好感は抱けなかった。