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第8章 現実は厳しく…

愛だった

強い愛だった

別れるしかない愛だった

栞奈はその人に自分を重ねた

「………離れるの……辛くない？」

そんなに愛してるのに……

離れなきゃいけないなんて……

聞いてる方が辛かった

『辛いよ……この先、もっと辛いだろうね
人生の半分以上共に生きて来た盟友だもん
半身をもぎ取られてしまうんだと想う
そして私は半身をなくして不完全なまま……
死ぬまでの日々を生きて逝く
それが命を粗末にした私の贖罪なのだからね』

それこそが……贖罪だと……その人が言った

贖罪……

命を粗末にした者が受ける贖罪の日々だと言うのか……

「生きてね」

私は酷い言葉をその人に伝える

一人でこの先も生きて逝けと言う

『もう死なないよ
生きて逝く』

「………もう逢うことはないだろうけど……」

『悔いのない日々を送って下さい！』

「貴方も……」

その人は頷いた

栞奈は走るようにして、その人の傍から離れた

あの人は愛を捨てて生きて逝くと言った

それこそが贖罪の日々だと…言った

そんな愛の形もあるのだと……

栞奈は苦しくなった

死に別れじゃなく

お互い愛して合ってるのに……

それでも別れなきゃいけないのだ

そして……もう逢わない世界に逝く

逢おうとすれば逢えるのに……

死んだわけじゃないから……逢えるのに……