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あいの向こう側
第10章 眺める街
専門時代からのカノジョがいた。



石黒紗英は小柄で可愛いほうだが、
見た目とは真逆でマイペースなうえに捌けていた。


互いに就職してからは月2回程会い、
会えない時はメッセージかTELで話をしていた。



半年くらい前だろうか。


長く付き合った安心感があり、
連絡もあまりしなくても「いつも繋がっているから」と仕事に忙殺されていた。
夜になって一息つこうとコンビニにコーヒーを買いに行き、

ついでに会社近くの通りをプラプラ歩いた。



紗英らしき黒髪ボブの小柄な女性が、
飲み屋の前に立っていた。


たまに俺のオフィス近くまで会いに来ることもあったから……


てっきりそうだと思って近づくと、
紗英は男と一緒だった。



俺は呼び掛けようとした声を飲み込んで背中を向けた。



男は友人かもしれないし、会社仲間かもしれない。


だが、
俺が驚いたのは男と居る紗英じゃなかった。

―――男に向かって、
これ以上ない程嬉しげな笑い顔を見せていた紗英に驚いたのだ。
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