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あいの向こう側
第10章 眺める街
朝8時。
漸く作業がひと段落着いた。
俺は仮眠ベッドで寝ている井野尾に『俺、帰るからねー』
と声を掛けてオフィスを出た。
布団の中から『ふぁい』と返事がした。
3日ぶりにアパートに戻ってきた。
鍵を開けて入る。
2DKのアパート。
会社に入ってからオフィス近くに引っ越した。
リビングに小さなテーブルとソファー。
隣は寝室。
暫く帰っていないと、
『ウチ』というより素泊まり宿みたいに感じる。
風呂に湯を張りながらくたびれたシャツ・チノパンを脱いだ。
ボクサーパンツ一枚で米を研いで炊飯ボタンを押す。
そうこうしている間に狭い浴槽に湯が溜まる。
俺はボクサーパンツを脱いで湯船に浸かった。
『は〜〜〜〜〜………』
湯船に浸かると疲れが取れる。
俺は目を閉じて暫く浸かったあと、
シャワーで髪をガシガシ洗った。
『………伸びたなぁ……』毛先がかなり伸びた。
紗英はたまに俺の髪を切っていた。
手先が不器用で、
耳を切られたこともある。
『……ぷっ』
思い出して吹き出した。
(過去形になってるし)
風呂から上がって、
下着のままベッドに倒れ込んだ。