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あいの向こう側
第10章 眺める街
ハッと目が覚める。



『……………ゆ、夢………………』


ピリリ…
ピリリ…と流しの横で炊飯器が鳴っていた。



汗をびっしょりかいている。

はー、はー……と息を整えた。
『そりゃ夢だろ……』
額に両手を充てて冷笑する。



紗英があの夜に、
俺の知らない男に笑っていたのを見てから……

俺はあまり連絡をしなくなった。


―――驚いたのだ。

紗英があんなに華やかに笑う人だったこと。
楽しげに、満面の笑みを出せること。

笑顔を長く見てなかったにも関わらず、
危機感も持たずに「繋がってるから大丈夫だ」と思い込んでいた自分に気付き愕然とした。


俺はあんな笑顔にさせてたっけ。
長くあんな笑顔すらさせてなかった気がする。
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