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あいの向こう側
第12章 みなとみち
――――スイスのベルンにて外国人旅行者に付き通訳を行っていたわたし。




山が多く、
酸素が少ない地域を案内中にわたしは目眩がした。


「仕事なのだから」と目眩に気付かないフリをして4日間の観光案内役通訳を終えると、
駅でよろよろと座り込んでしまったのだ。


『―――大丈夫かい?』
『休んだほうがいいわ、
顔が青くなってるもの』

2人の男女に抱えられてベンチに寝た。



しばらくすると気分がよくなった。


わたしは上体をゆっくりと起こして、
同年代と思しき白人2人に礼を言った。



2人はスラリと背が高く、
わたしは(恋人同士なのだな)と感じた。


毛先を外に跳ねさせたボブカットの女性が、
『――まあ!
何て美しい漆黒かしら?』とわたしの腰まで伸びた髪を撫でた………………




2人はフランスからの旅行者だという。

わたしはフランスに居るとき、
言葉の端々に「東洋人だ」「米国の属国じゃあなかったかしら?」
といった差別的な表現を感じ取ることが多くあった。


2人からはそういった排他的な印象は受けず、
寧ろ大げさなほど歓待されているような感覚を持った。

もっと、ずっと後………
わたしと熱愛してしまうまで。
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