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あいの向こう側
第12章 みなとみち
あまりに自由奔放に、
あまりに熱心に〔自分のしたいこと〕
に嵌まっている2人だったから。



マリは、
わたしを見ると『隠していてごめんなさい。
サワコと2人で居ると楽しくて』と話す。


すかさずニックが『2人で?!
おかしいだろう、いつだってマリは僕と対のはずだ。サワコが何だっていうんだ。
ただの東洋人じゃないか』と叫んだ。





蔑んだ言い方だった。


マリはニックの頬を叩いた。
パシッと乾いた音が響く。
マリは声を震わせ、
『……サワコは美しいわ。わたしはサワコの髪や体、爪先まで全てを尊敬してる。感性だってサワコ個人のものよ。人を見て言葉を選んで、人を見て合わせて動くの。
ニック、見損なった』
と言いアパートメントを出て行った。




ニックはわたしを直視せず、『………もう僕たちと関わらないでくれ。
マリはあんなヤツじゃなかった。自由に見えて必ず僕のところに帰って来ていたのに、このところ上の空で日曜すら居ない。二言目には「サワコがね」って話し出す』
苦々しげにそう言うと、
部屋を出て行ってしまった。




バタンと扉が閉まる音がした。
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