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あいの向こう側
第13章 夏に飛び込んで
おおかた、少しはloveっとしたかったんだろう。


悪いけれど寝たからといって興味が湧くわけじゃない。

俺は、仕事中は仕事に集中する。




『……………あれっ?』

少しだけ離れて佇む真衣をよそに会場を見渡すと、
見たことがある人が歩いていた。


『クジラくん?』
茶色い髪。
狭くて細い肩幅。

俺は階段を駆け降りた。



走る。
『クジラくん!』
肩を掴むと、
昨夜のあの可愛らしい顔が目を見開いた。





『あれっ?
明莉の彼氏さん?』江藤鯨は俺を指さす。



『やっぱりクジラくんだった。
何、休みなの?』


『イエ……………
僕、ここの壁面デザインしたんで。
どんな具合かなと見にきたんです』

鯨くんは隣のガラス張りの建物を指した。



壁面デザイン……………………




野外ステージに隣接している、
ショッピングモール。
そこの1階は屋外に飛び出した造りで、洒落た雰囲気のカフェスペースがある。壁面がモノトーンの動物たちで埋め尽くされていた。
「都会のなかにぽっかり夜のサバンナが現れたようだ」と、以前評論家が絶賛していた。


『…………へ?
まさか……………
あのカフェスペースの壁面デザイン?』
俺が目を丸くすると、
鯨くんは恥ずかしげに俯いた。
『………ええ、まぁ………』






スゴい人じゃん。


早く言えよ明莉………………


『彼氏さんは?
えっと、セイルさん……だよね』


_____上目遣いに見るクジラくん。
目が合うと、
互いに吹き出した。





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