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あいの向こう側
第13章 夏に飛び込んで
『たぶん、
あなたも_____』

クジラが俺に踏み寄った。


肩の上辺り。
頬を掠めて。

耳たぶを軽く噛まれた。




『……………何すんだよっ!』

俺は一瞬固まったあとでクジラくんを突き飛ばした。







クジラくんは俯き、
『___が好きなんでしょう』
と早口で言うとトイレを出て行った………………………………………………………
























俺は暫くボンヤリ突っ立っていた。
『___!
いけない、始めなきゃ』
慌てて駆け出す。

野外ステージの裏手に向かう。


マイクのスイッチをONにした。

裏手から覗くと客席は殆ど埋まっていてホッとする。



新人アーティストは、
白いロングワンピースにサンダル。
ハット帽から緩いウェーブが長く伸びていた。

アーティストの自作曲を流す。
女の子は階段を上がり、
ステージへと消えていく。

トークイベントは、
プロの司会者が対談形式で進めていく。

地方局のフリーアナウンサーを呼んだ。

インパクトは薄い。
うちのイベント会社の程が分かる。
本当なら、
もう少し有名どころのフリーアナウンサーか声が耳慣れしたラジオ番組のDJを呼びたい。



____ともあれ、
トークイベントは順調に進んでいる。


他の社員たちと客席に移動し椅子を増やしつつ、
様子を見守る。





トークイベントの最後は、
アーティストが歌う。


アコースティックギターのノンビリした音がステージ周りに響く。



俺は自分の指に触れた。

音が届くのと同時に、
クジラくんの熱い息が蘇る。
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