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あいの向こう側
第14章 嗤う波
とりあえずラブラブだから、
まぁいいかと思う。

タツキは男女関係なく友達が多いわりに浮気の影がなくて、
信頼できるのが何より安心する。



_____手を繋いで夜の海まで歩いてきた。


この街は海岸沿いにあるため、
潮の匂いがする。


タツキの車を近くの駐車場に置いてきた。
土曜の夜のデートだ。このままタツキのアパートに泊まるつもり。タツキはブルーのシャツに白いカーゴパンツ。
カナはシフォンブラウス・ショートパンツという恰好だ。


温い空気がまとわりつく。



海岸沿いが湾曲になっている。

カナはタツキの熱い手にどきどきしながら歩く。


ザザ…………
ザザザ…………………


波の音が優しい。


『カナ、
俺ら海くるの初めてだよね?
すっげー嬉しい』


『…………あたしも!
夜の海って憧れてたんだ~』



カナは過去に暴力男と付き合ったことがある。
短大生の時だ。

その次は浮気性の男。


男なんてクズだと考えていたカナに、
タツキは光を当ててくれた。

タツキはブレがない。

悪いことは悪いと言うし、
好きなことはとことん好き。
はっきりしていて芯が強い。



たまに、
〔正しさ〕が苦しくなるけれど。


それでもタツキを尊敬してる。

彼に友人が多いのも納得だった。













沿線を歩くと、
浜に下る階段があった。


暗くて少し怖いけど…………
タツキがいれば大丈夫。



手を強く握って、
階段を一段ずつ下りた。


街灯が5メートル毎についている。


『あ、カニ!』
タツキが足元を見て声を挙げる。

『うそ、どこ?カニ?』

『滑らないように気をつけて!
ほら、
小さいのが歩いてる』



足元を見ると、
赤い塊がうごうごしている。

『きゃっ!』
動きが気味悪く感じたカナは、
飛び上がった。


『うわっ……………』タツキが声を挙げた。
拍子に手を繋いだまま階段から転がり落ちてしまった………………………






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