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あいの向こう側
第15章 イトヲヒク
『美晴ぅ-??
帰ってるのぉ?』
2階から母親の声がして、
納豆から目を離した。
『帰ってるよー』
____母親・瑤子【ようこ】は61歳だ。
『ちょっと来てぇ、
いっしょに探してよぉ』
何やら叫ぶ母親に箸を置き立ち上がった。
私が物心つく前に離婚し、
以来女手ひとつで育ててくれた。
父親は銀行員だったらしい。
らしいというのは、離婚後交流がなかったから親戚・当の母親から聞いたのだ。
母親は学者塾の経営者である。
元々アルバイトのいち講師だったらしいが、離婚を機に正社員に登用させてもらい後に経営側に回り始めた。
小学生のときに背が高く痩せた壮年の男性を連れて来たのを覚えている。
母親は私に「塾でいちばん上の先生よ」と紹介した。