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あいの向こう側
第15章 イトヲヒク
当時おそらく恋人関係にあり、
その男から経営権を奪取したに違いない。
確証はないのに、
確信はある。
_____2階に上がると母が箪笥の引き出しをすべて開けていた。
『何やってるのよ、これ』
私は呆れてそこらじゅう散らかしている母親の部屋を見回した。
膝が痛いというので「じゃあ1階の私の部屋と代わろうよ」と提案したが、
母親は「それは高齢者みたいだからしたくない」と2階に部屋を構えていた。
小さな一戸建てに2人暮らし。
『ねえ~、パールのネックレス知らない?
留め金のところが紫の石でね』
『私が知ってるわけないでしょうよ………
何、保護者説明会でもあるの』
母親は経営権を持ったまま〔院政〕状況にある。
生徒層は小学生~高校生。
個人塾なのによく持つなぁと思う。
母親曰く「目利きだけは優れているもの」。
良い講師陣を選んだのは自分だといいたいらしい。
熱心な保護者と面談の機会を年に5回設けている。三者面談のようなものらしい。
インターネット回線を利用した授業が当然の近年、
「学校が役割を果たしていないわ」と保護者面談をつけた。
「塾が子供の学力を今まで以上に伸ばさなくてどうするの」というのが母親の言い分。
もちろん親は子供に良い成績を取らせたい。
低くてOKなんていやしない。
そういった親の感情にシンクロした勉強の進め方が謳い文句。
母親のざっくりした性格がウケたのか?
不登校の学生が沢山通うようになり塾の〔儲け〕は大幅アップしたそうだ。
『この辺じゃないの?
アクセサリー、箪笥じゃなくてチェストだったよーな…………』
私は太ももの高さのチェストの一段目を引いた。
『無いわよぉ、
見たものそこ。
あっれぇ、おかしいわね。
どこかに仕舞ったはずなんだけど』
スウエットを着用し、
屈んで床を這う母親。