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あいの向こう側
第15章 イトヲヒク
母親とそっくりな自分に気づき、

妙に腑に落ちた。
嫌悪もなかった。

以来割り切った付き合いしかしないと決めている。



納豆を再びこねる。



時計の音が大きく響いていた。














____その人は、
おかしな場所にいた。



別れを告げてから1ヶ月後。
既婚MR男のことはきれいさっぱり脳内から消えていた。
職場で顔を合わせるというのに、
私は本当に彼に関心がない。



灼熱の太陽が照りつける7月末。

盆前に墓参りに来た私は、
汗を拭いつつ先祖の墓を掃除していた。


母親は墓参りは盆・年末・
彼岸にしていたが、
今回は塾の講師陣の合宿があるという。今年から始めるらしい。

何をするのか知らないが塾講師に夏合宿があるのは気の毒だ。



「あなた時間あるでしょ?
ちゃんと参ってきてね」と頼まれた。



『はいは~い、
今年もご挨拶に参りましたよ』
私はぶつぶつ言いながら(暑いのだ)、
石を磨き拭いたあと花を生けた。

線香に火を点け吐息をかける。

ふわりとどこか懐かしい香りがする。




ガザッと音がしたので振り返った。

盆前だから他の家も墓参りをするだろう。




『……………………?』
私は瞬きした。


背が高く、
肩幅の広い青年が居た。

おかしなというのは、
彼は白衣を着ていたのだ。

瞬きした上に二度見してしまった。





ばちっと目が合う。


白衣の青年はキョトンとしたあと、
戸惑うように頭を下げた。

私もつられて一礼する。



(そりゃ、医者だって墓参りするんだろうけど……)
白衣のまましているのはあまり見たことがない。


霊安室を連想してしまった。


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