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あいの向こう側
第15章 イトヲヒク
(ぶつぶつ言いながら磨いていたのを見られたかしらん)
聞かれていたら恥ずかしい。
私は先祖を全く敬っていないなぁと思いながら手を合わせる。
『……………独特の匂いっすね』
『ひゃぁっ』声がしてビックリした。
尻もちを着いてしまう。
『あ、
すみません。驚かせてしまいましたね』
白衣の青年が私を見下ろしていた。
白くゴツゴツした手が目の前に伸びる。
『いえ、大丈夫です………』
私は尻もちを着いたことに赤面し自分で立ち上がった。
『匂い?って言いました?』
白衣青年に言うと、
彼は無言で頷く。顔が私より15センチくらい高く見上げる。
『これのこと?
白梅香』
私は線香を差し出した。
『ハクバイ…………
ああ、白梅か。
へぇ………お墓に匂いを嗅がせるとは』
神妙な顔で線香を見つめる青年は、
見たところ26、7歳のようだ。
(研修医か、
未だ新米辺りかな)
個人病院に勤務している私は医者は見慣れている。
老人やら子供連れの母親ばかり相手にしていると、
つい観察癖がついてしまった。
『分けてもらえませんかね……』
青年が呟く。
『…………はぁ』
墓場で線香のおすそ分けって……………
若干引きつつ何本か手渡した。
青年は『ありがとうございます』と目尻にシワを寄せて笑い背を向ける。
(善行には変わりないかな……)
変わった人だなと思い背中を眺めていたら、
彼は墓に参らずスタスタと墓地を出て行く。
私は思わず追いかけた。
聞かれていたら恥ずかしい。
私は先祖を全く敬っていないなぁと思いながら手を合わせる。
『……………独特の匂いっすね』
『ひゃぁっ』声がしてビックリした。
尻もちを着いてしまう。
『あ、
すみません。驚かせてしまいましたね』
白衣の青年が私を見下ろしていた。
白くゴツゴツした手が目の前に伸びる。
『いえ、大丈夫です………』
私は尻もちを着いたことに赤面し自分で立ち上がった。
『匂い?って言いました?』
白衣青年に言うと、
彼は無言で頷く。顔が私より15センチくらい高く見上げる。
『これのこと?
白梅香』
私は線香を差し出した。
『ハクバイ…………
ああ、白梅か。
へぇ………お墓に匂いを嗅がせるとは』
神妙な顔で線香を見つめる青年は、
見たところ26、7歳のようだ。
(研修医か、
未だ新米辺りかな)
個人病院に勤務している私は医者は見慣れている。
老人やら子供連れの母親ばかり相手にしていると、
つい観察癖がついてしまった。
『分けてもらえませんかね……』
青年が呟く。
『…………はぁ』
墓場で線香のおすそ分けって……………
若干引きつつ何本か手渡した。
青年は『ありがとうございます』と目尻にシワを寄せて笑い背を向ける。
(善行には変わりないかな……)
変わった人だなと思い背中を眺めていたら、
彼は墓に参らずスタスタと墓地を出て行く。
私は思わず追いかけた。