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あいの向こう側
第18章 色街慕情
未だ分かりもしないのに。
なのに女の部分が疼く。
結い上げただけの髪に、お下がりの着物。
わたしは小用を足すと厠を出た。
びくり、と脚を止めた。
男が立てっていたのだ。
僅かな灯りで見える、赤い髪………
物の怪か?!と身構えた。
男は浴衣姿で、赤い髪を束ねていた。
見上げるほど上背がある。
『そう構えるな、
怪しい者ではない』
男はクックッと笑いながら、
わたしに近寄る。
『………何用でしょう?
置屋はあちら、ここには厠があるだけです』
声が震えてしまう。
男は、
微笑んだ。
わたしは男の微笑をあまり見たことがなかったから、おののいた。
『………厠で弄っておられたろう?』
男の言葉にカアッと顔が熱くなる。
『だ、だから何だというのですか』
ふわりと体が浮いた。
気がつくと、男に抱きしめられていた。
『そなたを一目見た時から気に入っていた。
が、
見習いに銭を払うのも気が引けて和香太夫(わかだゆう)の客人として出入りしていた』
男は低い、だけれど穏やかな声で話す。
抱きしめられて殿方の肉体の頑強さを初めて知った。
厚い胸は硬かった。
『…………どうだ?
一度客人としてそなたを指名していいだろうか』
男の申し出に、
わたしは心が踊った。
これで、見習い修行も進む!
………しかし、和香太夫さまがお怒りになるのでは…………
置屋では当然のこと。
下の者が太夫さまの客人を取るなど、
磔の刑に値する。
(桔梗………可愛い子じゃ…………)
ふと、姐さまの声が脳裏に浮かぶ。
わたしの拙い体を、愛でるように撫で回す姐さま。
姐さまにお近づきになりたい。
見習い風情だけれど…………
なのに女の部分が疼く。
結い上げただけの髪に、お下がりの着物。
わたしは小用を足すと厠を出た。
びくり、と脚を止めた。
男が立てっていたのだ。
僅かな灯りで見える、赤い髪………
物の怪か?!と身構えた。
男は浴衣姿で、赤い髪を束ねていた。
見上げるほど上背がある。
『そう構えるな、
怪しい者ではない』
男はクックッと笑いながら、
わたしに近寄る。
『………何用でしょう?
置屋はあちら、ここには厠があるだけです』
声が震えてしまう。
男は、
微笑んだ。
わたしは男の微笑をあまり見たことがなかったから、おののいた。
『………厠で弄っておられたろう?』
男の言葉にカアッと顔が熱くなる。
『だ、だから何だというのですか』
ふわりと体が浮いた。
気がつくと、男に抱きしめられていた。
『そなたを一目見た時から気に入っていた。
が、
見習いに銭を払うのも気が引けて和香太夫(わかだゆう)の客人として出入りしていた』
男は低い、だけれど穏やかな声で話す。
抱きしめられて殿方の肉体の頑強さを初めて知った。
厚い胸は硬かった。
『…………どうだ?
一度客人としてそなたを指名していいだろうか』
男の申し出に、
わたしは心が踊った。
これで、見習い修行も進む!
………しかし、和香太夫さまがお怒りになるのでは…………
置屋では当然のこと。
下の者が太夫さまの客人を取るなど、
磔の刑に値する。
(桔梗………可愛い子じゃ…………)
ふと、姐さまの声が脳裏に浮かぶ。
わたしの拙い体を、愛でるように撫で回す姐さま。
姐さまにお近づきになりたい。
見習い風情だけれど…………